空から降る音

2021年4月29日


 

 耕治人に「天井から降る哀しい音」という小説がある。認知症の進んだ老妻が台所の火を消し忘れ、火災報知器の音が天井から鳴りやまないという印象的な場面があった。

 沖縄の場合は日常的に空から米軍機の音が降ってくる。これが凄まじくたまらない。いつからか、あの危険なオスプレイが私の住居の上を飛ぶようになった。民間地の上は飛ばないという最初の約束は簡単に反故にされ、いまでは早朝や夜9時を過ぎても爆音を鳴り響かせている。県民の抗議を受けて米国に要望を出す日本政府の声も無視されている(こんな事実から、日本は実のところ主権国家ではないということがあらわになる)。

 穏やかな心臓のリズムを乱す、オスプレイの重低音の怒涛。鼓膜の内側から響いてきて頭の中がかき回される。高い建物のすぐ上空を飛行する機体は、プロペラが接触しないか見ていてハラハラする。

 空から降ってくるのは爆音だけではない。沖縄では、米軍機は簡単に墜落する。「沖縄県の統計では、1972年の本土復帰から2016年末までに県内で発生した米軍機関連の事故は709件で、墜落事故は47件。直近では16年12月に輸送機オスプレイが名護市安部の海岸に墜落して大破、米兵2人が負傷した。12年10月の県内配備以降、初めてのオスプレイ墜落事故だった」(「沖縄タイムス」2017年10月12日)

「空から降る音」と書くとなにやら「文学」めいてくるが、そんな情緒を軽く吹き飛ばす現実。私たち沖縄の人間はそんな日常を生きている。


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