夜、本を読んでいてふと顔を上げると網戸に2匹ヤモリが引っ付いている。卓上ライトの灯りに寄ってくる羽虫を捕らえるために待ち構えているのだ。
目がいいのだろうか、それとも他の感覚器官で感知するのだろうか、離れたところでも羽虫が網戸に止まるとそこに顔を向け、足早に動き出す。タイミングを計っているらしく、尻尾を少し浮かせて揺らしている。その動きが止んだ瞬間、獲物に飛びかかる。この一連の動きが流麗でつい見入ってしまう。本を読むどころではない。
ヤモリの鳴き声は気味が悪いと言う外国からの留学生がいた。沖縄で生まれ育った私にはなじみのある鳴き声が、初めて聞くその人には「魔女の笑い声」に聞こえるらしい。そう表現されると、もはやそのようにしか聞こえない。
他日、他の人とヤモリの話で盛り上がった。私はある程度ヤモリのことには詳しいと自負していたが、その人は徹底して調べ自分の知識にしていた。
その日初めて私が学んだのは、ヤモリの鳴き声のことである。ずっとオスがメスに求愛するために鳴いているのだと思っていたがそれは誤りで、自分の縄張りを主張するために鳴いているのだという。たしかに、ヤモリが鳴いても仲間が集まってくることはない。また、敵が襲ってくるときには仲間同士で緊急アラート的な鳴き声を発するのだそうだ。
ヤモリの生態は知らないことだらけである。