星を見ていた

2022年4月30日


 かつて住んでいた地域は都会とも呼べるほどの街であったが、海と山に囲まれ自然にも恵まれていた。街中を大きな川が蛇行して流れている。自転車を漕ぎながら、そのまま川に飛び込んだら気持ちがいいだろうと思うくらいに水が澄んでいた。夏には仲間たちと自転車で上流への道をたどり、かなり高さのある大きな岩から川に飛び込んだ。

 夏の一夜、仲間たちと寮の屋上に寝転がり、満天の星空を見上げながら、いつまでも尽きない話をしていた。私たちには時間はいくらでもあった。流れ星が尾を引いて次々と流れていくのをそのたびに目で追った。

 退屈だったわけではない。なにをするでもない曖昧な日々を過ごしながらも、なにかが生起しつつあるという予感。無為の時間をことほぐ、そんなことをしていたのではないか。

 仲間の話を聞くともなく聞きながら、私はずっと星を見ていた。


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