memo 2

2021年5月22日

memo



 彼の息子は当初アルコール依存症という病気で入院した。息子自身の家族は、家へ戻ってきても入れさせないと主張した。

 それでやむなく息子は、彼らの住んでいる家へやってくるだろうと夫妻は考えた。

 そうなると息子は玄関に立って、ドアを叩くだろう。どうしたってそうなるはずだ。彼は父親であるのだから。そのことを、どれほど彼は考えたかしれない。妄想というよりそれは現実と思えた。

(「うるわしき日々」小島信夫)


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