見ている

2021年5月14日



 彼はいつも大学の中にひとりでいる。たまたま私は彼の家の事情を知っているが、たぶん家に帰りたくないのだろうと思う。彼とは会話ができない。会話を試みたこともあったが、うまく通じず、そのうち彼は私を避けるようになった。

 夜も遅くまで構内にいる。図書館やパソコンルーム、校舎内などにいるのをよく見かける。夜10時ごろ車で帰宅する途中、大学の付近を歩いている彼を見かけた。こんな時間までいるんだ、となんとも言えない気持ちになった。

 おそらく、私にできることはなにもない。それでも、「いつも見ているよ」ということだけでも彼に伝えられないかと考えている。



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