生産物が価値をもつものとして流通するためには、そこに「命がけの飛躍」があったとマルクスは言う。
楳図かずおは『わたしは真悟』で333メートルの高さを持つ東京タワーから子供たちを文字通り飛躍させてしまう。「命がけの飛躍」という比喩を、ほとんど狂気ともいえる発想であっけなく実践するのだ。
奇跡は 誰にでも/一度おきる/だが/おきたことには/誰も気がつかない
奇跡が起きるためには、ただ待機しているだけでは充分ではないのだろう。意図することなく無防備に外界へからだを開いている子供たちこそ、結果的に奇跡を招き寄せ享受する存在なのかもしれない。