黒い絨毯

2026年4月30日


 庭先に出ると蟻が行列をつくっているのを見かける季節になった。その行列を見ていると気づくことがあった。日ごとに蟻の種類が違うのである。蟻が通る場所はだいたい決まっているので、注意して見ると種類の見分けがつく。

蟻の熾烈な縄張り争い―。つまりこういうことが起こっているのではないかと私は想像する。先の蟻たちがつくった巣を奪い取り、新たに自分たちの物にしたのではないか。そうだとすると、負けた蟻たちは餌食になったのだろうか。地中で繰り広げられる蟻の世界の興隆に、めくるめく思いにとらわれる。

 それにしても、蟻は見ていて気持ちの良いものではない。ひたすら目的に向かって動いている姿は勤勉ではあろうが、表情がうかがい知れないだけに不気味でもある。私が蟻に対して決定的な恐怖を覚えたのは、2011年にスリランカに行ってからである。

 ある山の中にグループで入り、一息つこうと開けた場所で休んでいたときのこと。一匹の蟻が私のズボンを上がってくるのが見えた、と思う間に大量の蟻が群がって私の体に続々と上ってきたのである。あまりのスピードに一瞬何が起こったのかわからず、まったく身動きができなかった。周りにいる人たちが慌てて手で払ってくれて、なんとか蟻の襲撃をまぬがれた。

 それから、一匹の蟻だけなら何とも思わないが、列をつくっているのを見るとかすかな不安を覚えるようになった。蟻が小さくて良かったと思う。これがゴキブリほどの大きさなら、群れになった蟻に人間は食われてしまうのではないか。

 アマゾンの奥地で人食い蟻に襲われるという映画『黒い絨毯』(1954年)を私はいまだに見ることができない。うごめく黒い絨毯を想像するだけでも、文字通り「身の毛がよだつ」のだ。

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