無限の書物について

2026年1月28日


 ボルヘスの短編「バベルの図書館」が描くのは、終わりのない無限の図書館である。そこには、この世のありとあらゆる書物が集められている。

 バベルの図書館は六角形状の塔のようなもので、上へ行っても下へと降りても、終わりがない。同じ六角形の部屋が連なり、その四辺の壁にはぎっしりと本が詰まっている。無限のことばの世界を旅する人たちは、目的の書物に達しないまま永遠に図書館の中をさまよう。

 それは一見、寓話の世界のように見えるが、はたしてそうなのか。この息のつまるような空間こそ、私たちがふだん〈ことば〉を使って生活することそのものの喩えではないだろうか。私たちはすでに存在している〈ことば〉―辞書がわかりやすい例だろう―を幾通りにも組み合わせて新たな思考を生み出していく。「その無秩序は、くり返されて、秩序を構成するだろう」という一節から、〈ことば〉の無限の反復性そのものをボルヘスが祝福していると考えるなら、永遠につづく反復を私たちはおそれることはない。

 ユートピア的な無窮の図書館とは、空想上の産物ではなく、現に私たちの目の前にある一冊の本の中にこそ、存在するものであるかもしれない。

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