私の住まいの近くにある公立図書館は丘の上に建っていて、実に眺めが良く、本島の西側の街並みから向こうにある海まで見渡すことができる。だが、視界の大部分を占めているのは米軍基地であり、フェンスで囲まれた緑の芝生の中に並ぶ住宅地や丘や森を眼下に見ることができる。
部外者はもちろん基地の中に入ることができないので、私は図書館を訪れるたびに基地の中の風景につい見入ってしまう。
その基地の中に一年ほど前から工事車両が大量に出入りしている。いったいなにが出来るのか好奇心で見ていたが、そのうち大きな丘が削られていく。その隣の敷地には大きな建物―高層住宅、施設―が建設されるのだろうか、いまだに基礎部分しか出来ていないので推測するしかない。それにしても、緑あふれる大きな丘が削られて、おもちゃのカップケーキのような形になるとは思わなかった。
米軍基地の集中する中南部は住宅も密集していて、北部にくらべると緑はかなり少ない。いまや貴重な自然環境は基地の中にしかない、と皮肉交じりに言われるくらいである。基地の中にはたしかに豊かな緑が残っているのだった。だが、いまやそれもなくなりつつあるのかもしれない、と溜息が出てくる。
かつて80年代を基地の中で米軍属の家族として幼少時代を過ごした人が思い出混じりに書いていた。基地の中にはあちこちに山や川があり、まるでジャングルのようだった、と。そこを探検するのが子供たちの遊びだったそうだ。
もはやそれも過去のものとなっている。