自動車の運転免許証の更新のため運転免許センターに行ってきた。受付開始前からけっこうな数の人が並んでいて、無事更新終了したときには大仕事を片づけた気持ちになった。五年に一度だから、前回の記憶はすっかり抜け落ちている。
顔写真撮影のときに何度か「口を閉じてください」と注意を受けた。写真撮影のときは笑顔を見せるようにしていて、そのときもそれを自然にしたわけだが、私の意識では笑うということと口を閉じるということが結びつかず、つい笑顔を保とうとしては口を閉じるよう注意される。口を閉じるということは笑ってはいけないということなのだと遅まきながら気づいた(そう言ってくれたらよかったのに、と思いつつ)。
二十代の前半を外国で過ごした。証明写真を撮るときは、必ず「笑顔を見せて」と言われたものだ。その国で初めて取得した運転免許証の顔写真も満面の笑みである。ちなみに、麺をズズズとすするのはとてもマナーの悪いことだと矯正され、私はいまだに日本でも音を立てて麺をすすらない(すすれない)。
その国の人の顔写真は見ていて清々しいほどの笑顔ばかりだ。幼少のころから笑うということを教えられているのだろう、歯を見せて笑顔で写真に写ることが徹底されている。
かの国で笑顔の証明写真が認められ特に支障が出ないことを考えるなら、日本で笑顔がだめだという理由は実のところないのではと思ってしまう。
証明写真を撮影するときに「笑って!」という国とその逆の国。ふだんの生活でも前者のほうが気楽にやっていけるような気がするが、どうだろうか。