風に飛ばされるような

2023年7月17日

ことば


 断言は避けたいと思う。口にした瞬間に、固定され、重みのある塊となることば。それは聞く/読むほうにとっても、話す/書く人にとっても、わかりやすいことばであろう。実のところ、ことばを発する当人も気持ちがいい。すべてはことばを発した瞬間に限定され、分類され、明確な形をとるからだ。確実な手触りのあることばはなんと安心できることか。

だが、それだけが求められることばではないはずだ(いくぶんか断言ぎみに)。

 風が吹けばどこかへ軽く飛ばされてしまうようなか弱いことば。受け取ったと思ったときにはその姿はなく、残像や痕跡のみかろうじて感知されることば。心もとない単語を連ねていくことで繋留されるが風にたやすく震えいまにも消え入るようなことば。そういうものを書くことが私の夢であるのだが、ついわかりやすいことばに頼ってしまうこともままある。文章を書くとは、断定と曖昧を往還することから生まれる逡巡をかたちにすることなのかもしれない。

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