図書館という場所

2021年10月15日



 フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館」は、ニューヨーク市内に92の分館を持つ巨大な図書館の日常を撮っている。そこでは講演会、ダンス教室、点字の読み方を教える講座、差別を受けてきた黒人の歴史について話し合う会合、音楽の演奏会などが催される。それぞれの分館がつながって、街の中に文化的な空間を生み出す。図書館はこんなにも魅力的になりうるのだ。

 書籍やパソコンの画面に向かう人たちの真摯な顔につい見惚れる。

 映画に登場する司書が語るように、単なる書庫とみなしてしまうと図書館に未来はないだろう。可能性があるとすれば、人と人をつなげる〈場〉としてではないか。

 映画の中で印象に残るのは、本館の玄関にある回転ドアである。回転ドアは閉じることなく常に回りながら、入りたい者をすっと受け入れる。この「回転ドア」がニューヨーク公共図書館の姿勢をあらわしている。


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