これまであまり深く考えたことがなかったが、映画上映前の劇場映画予告編はなぜこんなにも騒々しいのだろうと気になった。もちろん観客を引きつけるためにヤマ場を取り上げたり盛り上げる音楽を流したりするからなのだが、出演者がみんな叫ぶように話している日本映画の予告編を見て、そうかテレビなのだと気づいた。
テレビでは特にバラエティー番組がそうだが、みな自己主張するように声が大きいし、気の利いたことを口にしなければならないし、全員が同じ乗りでなければならない。だから基本的に騒がしいのだ。テレビはなによりも沈黙を恐れる。
映画はテレビとは真逆である。沈黙や間がいかに大切かを知っている。それは映画の歴史がサイレントから始まったということも背景にあるだろう。
ただ、その映画もテレビの影響を受けずにはいられなくて、特に最近の日本映画は俳優たちがやたら叫んでいると思うのだ。もしかすると、テレビの画面を大きくしたものが映画だと思い込んでいる人もいるのかもしれない。
囁き声、そっとつぶやく声、風の吹く音、小鳥の鳴き声、そんな微かな声や音が忘れられていく。
その日見たのは濱口竜介『急に具合が悪くなる』。出演者の誰ひとり声を荒げることなく、淡々と話している。それだけでも貴重な映画だと思った。