遺骨収集

2025年3月9日


 ガマフヤーの具志堅隆松さんの案内で、学生たちとともに糸満市の荒崎海岸に向かう。沖縄戦時中、ひめゆり学徒隊の一部の女学生たちが自決を行った場所である。多くの住民たちがこの海岸に逃げてきたが、ここは最南端、それ以上逃げることはできず、米軍の攻撃で命を落とした。浜辺には波に洗われた死体が散乱していたという。この海岸ではいまだに回収されていない骨が見つかる。

曇り空のもと、高い波が押し寄せている。波の轟く音や強い風に会話もままならない。琉球石灰岩からなる海岸段丘のでこぼこの岩の間を歩きながら、熊手を手にそれぞれ散らばって遺骨を探す。熊手で岩間に密集している分厚い葉のクサトベラをかき分け、鋭い棘をもつ島アザミに指を刺されながら、骨を探していく。

具志堅さんが事前に骨とはこういうものだと見せてくれる。茶色い小石のようで、浜辺で見つけるのはむずかしいだろう。

探しているうちに、それらしきものをいくつか見つけ具志堅さんに確認してもらうが、いずれも石やサンゴ、木片などであった。そのうち私にも触っただけでこれは骨ではないなというのがわかってくる。

 けっきょく骨は見つからなかった。

 戻る途中、チョマゴリの服を着た若い女性とすれ違う。チョマゴリの鮮やかな色は灰色の風景の中でことさら明るく見える。彼女は晴れやかな顔で水平線に目をやりながら歩いている。しばらくして振り返ると、彼女の後姿は海岸段丘の向こうへと消えていった。




 


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